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『映画映画ベストテン』にエントリーします。

男の魂に火をつけろ!」さんが行なっている毎年春と冬に行っている映画ベストテン企画。
今年もエントリーが始まったので参加することにしました。
今回は『映画映画ベストテン』。

順位はこんな感じ。

1.ブリグズビー・ベア(2017年米 デイヴ・マッカリー監督)
2.ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~(2015年日本 WOWOW)
3.リトル・ランボーズ(2008年英仏 ガース・ジェニングス監督)
4.僕らのミライへ逆回転(2008年米 ミシェル・ゴンドリー監督)
5.エド・ウッド(1994年米 ティム・バートン監督)
6.ラスト・アクション・ヒーロー(1993年米 ジョン・マクティアナン監督)
7.トーキング・ヘッド(1992年日本 押井守監督)
8.千年女優(2002年日本 今敏監督)
9.雨に唄えば(1952年米 ジーン・ケリー&スタンリー・ドーネン監督)
10.太秦ライムライト(2014年日本 落合賢監督)

1は最近の作品から。というか2018年公開だ。
物語の始まりは個性的だけど、好き物が同じ同士が語り合う時の楽しさ、
映画作りの楽しさを真正面から描いているのが印象的。
終盤の上映会直前に主人公が見せた行動とその心情が個人的には痛いほど刺さってしまう。
自分自身の記憶の引き出しを開けるドラマ、漫画、映画といった創作物というツボは
人によって色々あると思うが、自分にとってはこれ。

2はWOWOWのみで放送された押井守監督の映画『ガルムウォーズ』の製作ドキュメンタリー。
日本人が海外で映画を撮ること、プロデューサーとの折衝や製作現場での苦労と、
商業映画を作ることはこんなにも大変である、ということが克明に映し出されている。
本当に危ない部分は映ってないみたいだけど、その一部だけでも大変スリリングだ。
普段トークショーで見せる押井監督の「話芸」が「話術」という武器として
使われている一端を垣間見られる意味でも貴重な映像資料。犬可愛い。

ある一つの映画に憧れてその作品の系譜にある映画を自分達で作ろうとする情熱が描かれた3。
その情熱はいくつになっても変わらない。
シルヴェスター・スタローンの生み出したキャラクター「ロッキー」の続編『クリード』が
スタローン以外の手で作られた現在となっては、
この作品も少し変わった目線で観られそうな気がする。

『ブリグズビー・ベア』を観ていて思い出したのはこの4だ。
これも映画を作ることの楽しさに溢れた作品で、何なら配信サイトが全盛を誇る
今観ても良い気がする映画。
レンタルビデオショップに潜む胡散臭さ、一方で映画に対する強い愛も感じる。
初鑑賞時カメオ出演で爆笑した。

5は映画に夢見た創作者の姿を描いた、夢のような映画。
というかもう定番といっていいかもしれない。
エド・ウッドの実際の人生を念頭に置いて観ると、
よりこの映画が夢に溢れているのかも伝わってくる。
ジョニー・デップの純粋な眼差しが好き。

6については声に出して叫びたい。
スクリーンの向うからシュワちゃんが現れたら嬉しいに決まってるだろ!
一緒にスクリーンの向うに行けたら嬉しいだろ!
この映画は映画のヒーローに憧れた少年の夢を描いた、紛れもなく映画映画。

7は変わり種枠。アニメ映画の制作現場のドタバタと連続殺人事件の不条理劇を軸に語られる、
映画について語る映画。ほぼ全編映画館の中で撮影されたこの一作は間違いなく映画映画。

8を観たのは数年前なので思い出に残る一作という感じでもないのだが、
女優の人生と様々なジャンルの映画が重なり現実と虚構の境界線が
曖昧になっていく活劇は純粋に楽しいよなーと。

無声映画からトーキーへの移り変わりにおける大変さを喜劇調に描いた9も映画映画、
だと思う。声を活かした物語展開がナイス。

10には出演している数々の役者さんもそうだが、撮影に使われている場所も含め、
様々な歴史と人の記憶が眠っているような感じがする。
そういう意味でなんか忘れられない一作だ。


考えてみたら『カメラを止めるな!』も映画映画にはなるんだなーとは思ったが今回は入れず。
恐らく多くの人が投票するような気がするし。
集計よろしくお願いします。
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追憶創ります 『君の話』感想

『君の話』(早川書房)
三秋縋 著

幼い頃の記憶から徐々に消えていく新型アルツハイマーに発症する人が
増加しつつある近未来の日本。その病の研究の中で、
薬を処方することで偽の記憶=義憶(ぎおく)を人の頭の中に埋め込んだり、
本物の記憶を除去する技術が発達し、それを利用する人達も増え続けていた。
義憶に浸り続けて現実の生活をおざなりにしていた両親、
その義憶自体に嫌気が差していた主人公は、
これまで何の思い出も作らず、孤独な人生を歩んできた。
いっそのこと空っぽな人生の記憶そのものを消そうと思い、
初めて記憶を消す技術を利用する。
しかし何かの手違いで、主人公の頭の中に
「小さい頃からの幼馴染みと過ごした思い出」という義憶が生まれる。
虚構の記憶に気持ち良さを感じながら、
所詮偽物だと悩む主人公。主人公がこの義憶を消そうと思っていた矢先、
彼は自分と同じくらいに成長した幼馴染みと「再会」する...。

高い評判を目にしていたので手に取る。
既に第3刷まで行っていて人気があるんだなと。
それで読んだ結果、先が気になって1日で読んでしまった。
面白さを堪能した時、既に午前2時過ぎ。

在りもしない記憶の中の幼馴染み
(しかもその魅力的な義憶の中そのままに成長した女性)が
現実に現れるという主人公的には旨味のあるような展開だが、
当然そんな人が現れたら普通は怪しむ訳で、主人公も例外ではない。
ちなみに義億の中に出てくる人間は義者(ぎしゃ)と云われていて、
実在する人間をモデルとしてはいけない。だから余計に怪しくなるのである。

一体お前は何者なんだと疑いながら、しかし彼女と過ごし始める日々は正直楽しい。
次第に自分の中の義憶は義憶でなくて、
本当にあった記憶が消えていただけだったのか? と
自身の記憶に対する信頼も揺らいでいく。
それを確かめる為に調べていくSF的なサスペンスとしても
興味を惹かせてくれた。出版社が早川書房なのも納得してしまう。

物語の前半は主人公と幼馴染みとの義憶が描かれるのだけど、
これがもう恐ろしいぐらいに甘酸。
でもこれは義憶だと主人公自身は自覚してる前提があるから
白々しさはそんなに感じないし、
実際にこんなのが記憶として頭の中にあったら幼馴染みにハマっちゃうのも分かる。
ふとしたきっかけで記憶がフラッシュバックして
あの頃を思い返してしまう感覚はきっと誰しもあると思うが、
その「あの頃」は主人公にとっては虚構に過ぎなくて、
それが更に主人公を苦しめてしまうんですね。
そこにいなかったはずの彼女が現れたら、もう何が何だかと混乱するに決まっている。

そういう混乱を描きながら見えてくるのは物語の力強さ。
本作で描かれる義憶というのは特定の個人の為に
作られた架空の物語、つまりフィクションと読み替えることも可能だ。
作中では義憶を作る職業があることも説明されている。
フィクションが人に与える影響力の強さ、
人にとっての物語の必要性とは?
という作者の考えも物語を通して浮かび上がってきてる気がした。

物語の舞台は夏なので今の時期に読むにはピッタリの小説だと思う。
というか読み終わって「(結果がどうなるかは置いといて)映画化決定だろ...」と思ったし、
自分がもしもプロデューサーならすぐにでも出版社に連絡すると思える完成度だった。
二転三転するストーリーなのでネタバレ踏まないように要注意。
読み終わった時にはタイトルにも割りと納得するだろう。
人によってはなんちゅう話だと思うかもしれないけれど、
君と僕がそれで良いならそれで良いじゃないか。

そこにあの子達はいる 『鳥』感想

(某所で書いたものをこちらにも転載)

『鳥』(段々社)
オ・ジョンヒ 著 文茶影 訳

「夢は、体から抜け出た魂がさすらう道、
世界なのだと、おばあちゃんは言っていた。」
(5ページより引用)

半ば両親から見捨てられてしまった姉弟の2人の
姿を描いた物語で、姉の視点でお話は進んでいきます。

最後まで小さい子どもの目線で描かれているからか、
彼女の丁度目の位置にあたると思しき鞄の外形を
描写しているのが印象的でした。

鞄を持って外に飛び出していく人は沢山います。
それによって今までの場所から新たな世界に足を踏み入れていく人も。
この姉弟も外には出ますし、住む場所を転々とします。
けど2人を取り巻く今の世界からは全く抜け出せていない。
大人達はそういったものからいとも簡単に去っていけるのに。
まるで姉弟は鳥籠のような世界に囲まれてしまっているんじゃないか。
自由が与えられているようで、小さな個人の力では籠の外の世界へ
飛び出していくことは出来ない。そんな無情さを感じました。

対照的に詩的な表現、特に年齢を重ねた方が
教える言葉には美しさがあります。
それが救いであるかのように現実との落差が
また胸にクるのですが。
私は特に78~79ページを何度も読み返しました。

大きな世界は小さな世界が集まって形成されているとしたら、
この姉弟がいる場所もまた世界の1つで、
そのことに目を向ける機会を与えてくれる1冊です。

ある1人の人生『ストーナー』感想

(某所で書いたものの転載+ミックス)

『ストーナー』(作品社)
ジョン・ウィリアムズ著
東江一紀訳

「それを見定めたきみの愛はいっそう強いものとなり、
永の別れを告げゆく者を深く愛するだろう」
「シェイクスピア氏が三百年の時を越えて、
きみに語りかけているのだよ、ストーナー君。聞こえるかね?」
(第1章 14~15ページより引用)

某会でこの本について語る人1人1人の方の顔が活き活きとしていて、
そんなに凄い本なのかと思いつつ、いつか読もうかなレベルに考えていました。

少し前に同作者の『ブッチャーズ・クロッシング』を読み、
目に入った文章が頭の中で像を描き始める表現力に驚く。
これは『ストーナー』を読まねばと思い、
幸運にも同じ会で貸していただく。

心の中に灯った好きなものに対する情熱という名の火。
その灯火に対して不器用ながらも誠実であり続けようとした
ストーナーという人の人生を描いた小説です。
彼が通り過ぎていく1つ1つの転機が、
読んでいる自分自身の人生と交差し、
過去そして現在のあの日の幸福や失敗を思い出す。
それが辛くもあり愉快でもあり・・・時を経て実家に帰省した時の
感覚が妙に馴染む。

輝かしい経歴は無かったかもしれない。
沢山の人に評価された訳ではなかったかもしれない。
けど、だからなんだというんだろう。
自分の中の火を消さずに生きたということ。
それが大切なんじゃないか・・・と考えてもみたり。
私の好きな映画監督が「自分が今まで映画を撮り続けることが
出来たのは映画に飽きなかったから」というようなことを
昔インタビューで話していて、その言葉を本書を読んで思い出しました。

時代の空気や現実の煩雑な問題に圧し潰されそうになっても
自分が信じるものを裏切りたくないという強い意志が、
たとえストーナー自身が流暢に表現出来なくても端々から感じて、
自分は自分が好きなものに対してこんなにも執念を燃やせるだろうかと。
探究することが職業だけに留まらず、
生き方にまで昇華しているように見えたのも印象的でした。

そんなストーナーが出会う登場人物のイーディスとキャサリン。
彼女達の存在が彼の清濁併せ持った人間的な面を浮かび上がらせているようで、
2人を筆頭に、多くの様々な周辺人物との交流・衝突が
そのままストーナーという人間と彼の中の価値観を
描くことに繋がっている。その描写の仕方も好きです。
出会いと別れ、成長と老い、記憶と愛着、
登場人物1人1人の性格....切り取れば様々な部分で語れる魅力を持った、
まるで本当に在った人生ような小説だと思いました。

あなたは自分の好きなものが自分に
語りかけてきたような瞬間、覚えていますか?

そこにあった人生を想う『はるかなる岸辺』感想

(某所で書いたものをこちらにも転載)

『はるかなる岸辺』(岩波書店)
キャリル・フィリップス 著/上野直子 訳

流れ流れて、ドロシーという女性は
地方の村の一角に新規開発された住宅地に住んでいた。
そこで彼女は隣の家に住んでいて、
住宅地の管理人も務める男性ソロモンに出会う。
彼は1人で生きる彼女に親切にしてくれる。彼女もまたその優しさに触れ、
時には苦しいこともあるけれど、彼の存在によって温かい気持ちになる。
それが少しばかりしかない時間とは知らないまま。

本書はイギリスと移民の関係を取り上げた物語だ。
ドロシーはソロモンの存在を通して、
彼女が住む場所に漂う同調圧力的な空気や、
外部からやって来たソロモンに対する拒絶の空気を感じるようになっていく。
そしてその果ての「事態」にドロシーは直面する。

イングランドの地方部に辿り着いた2人の男女。
2人はそれぞれ異なる道を歩んできました。
それはもう変えることが出来ない、過ぎ去ってしまった日々。
辛く苦しく暴力的で、誤り続けたかもしれない人生。
そんな2人が出会い交流した、ほんの一時。
この本を読み終えた時、
その僅かな時間がもう一度戻ってきて欲しい。そう願わずにいられませんでした。
読む側にいる私に出来るのはこの本の冒頭に戻るということだけですが、
本の中の2人にとっては既に過去の出来事であり、それが哀しい。
同時に、2人のような人生を送る人が現在進行形でいることも
想像させます。ある意味において2人は特別ではないのです。
様々な人が夢見たイギリスへの希望を打ち崩す現実が、
読む側に突きつけられます。
その国だけで起こる問題ではないことを感じさせながら。

誰かに親切な人の背景には、周囲が知らない多くの失敗や後悔、
他者から受けた恩恵が秘められているかもしれない。
なぜなら1人1人にはその人固有の物語が必ず存在するから。
この本に登場する彼のように。
当たり前のことではありますが、
そのことを改めて考えさせてくれる1冊です。
第1章の文章の構成に驚くかもしれませんが、
ドロシーの精神の不安定さとその重さを痛切に感じました。

プロフィール

ヤギメロ

Author:ヤギメロ
映画とか本とか、色々好きな者だす。

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