映画『風立ちぬ』を観ました。/文芸ジブリ映画 少しネタバレあり

崖の上のポニョ』以来、久々の宮崎駿監督長編アニメーション作品。
ついに観てまいりました。
劇場内は混んでいて、夏休みを利用して観に来た人が多いのかなぁと思いました。
なんだかんだいってやはりスタジオジブリ、子ども連れも多かったです。

しかしこの『風立ちぬ』、子どもが楽しめるのかどうかは正直分からないです。
もう子どもとはいえない私でさえ観終わった時には「文芸映画を観たなぁ」と思いましたから。
つまり、非常に大人向けの内容となっています。
空想と現実が入り混じり、ラブシーンもあり、なによりそりゃもう煙草を吸います。
喫煙シーンを描くことが少なくなった映画の中では逆に貴重になっちゃってる気がして、
煙草吸わない私でも良いもの見せてもらった気分ですよ。
「ジブリで喫煙シーンを描くなんて!」と思う人がいるのかどうかは分かりませんが、
そういう人には辛いところかもしれません。

公式サイトはこちら


「美しいものを作りたい」
飛行機に憧れそんな夢を抱いた主人公、「堀越二郎」。
映画『風立ちぬ』は彼の少年時代から始まり、航空技術者として戦闘機を設計していき、
そしてあの有名な零戦と呼ばれる戦闘機を完成させるまでを描きます。
そんな二郎の人生に憧れの人「カプローニ」との夢での邂逅や、
ヒロイン「菜穂子」との愛し合う日々が絡み合っていきます。

最初に全体的に考えてみると……この作品、変な映画だなと思いました。
というのは、あるところを境に物語のジャンルが大きく変わっていくからです。
その「あるところ」とは、ヒロインである菜穂子との再会部分です。

まず映画は二郎の飛行機に憧れる少年時代から始まり、
世界的に有名な飛行機製作者であるカプローニと夢の中で出会います。
……なんと二人の夢がくっついて、その中で出会うんですよ。
完全にSFというかファンタジーというか。
この出会いをきっかけに二郎は飛行機製作者を志し、
その勉強をして設計の仕事に就きます。

職場での同じ飛行機製作者との出会い、挫折、海外出張……。
私は仕事映画といった感じで面白く思えました。
飛行シーンよりかは戦闘機の部品について語り合う場面が多いので、地味なのですが。
前半はそんな感じで進んでいきます。

二郎は関東大震災が発生した時、菜穂子と出会っています。
その時は一緒にいた彼女のお手伝いさんが怪我をしたので、二郎は介抱しました。
しかし彼は名前は名乗らず、それ以降二人が会うことはありませんでした。
時が経ち、軽井沢に休暇に行った際に二郎は菜穂子と再会します。
そこから映画は前半の仕事を描くものから
二人の恋愛ストーリー中心となり、最後まで突き進んでいきます。
仕事をするシーンが全くない訳じゃないですし同僚達と語り合う良いシーンも
あるんですけど、どちらかというと職場パートは端に追いやられていった印象があります。

同時に、カプローニが全く出てこなくなります
カプローニが主人公の仕事=美しいものを作ることの象徴とするならば、
菜穂子は主人公の恋愛の象徴でしょうか。菜穂子は優しく清らかで
普通はいないよなぁ」と思えるほどの理想的な女性です。
二郎にとって彼女は美しいもの(=者)だろうと思いました。
そんな女性との日々が後半は描かれています。

菜穂子は当時不治の病といわれた結核を患っています。
最大の障害としての「死」が待っているのです。
だからこそ二人は周りから何かを言われても深く愛し合います。
私は堀辰雄さんの小説『風立ちぬ』を読んでいるのですが、
この部分はそのエッセンスが詰まった切ないものとなっている気がします。
ただやっぱり「そこは帰してあげようよ……」と
野暮なことも考えちゃったりするのですが。

菜穂子の存在は二郎が作った零戦と重ねられて描かれる部分があります。
それが綺麗に分かれた印象を与える前半と後半を合体させ、
変な感じがしていた作品を「一本の映画」へと着地していきます。
最終的にその二つがどうなり、二郎は何を考えるのか。
そこは観ていただきたいと思います。

細かい部分を見ると……。

①自然や人間の細かな描写が素晴らしい。
正直この作品、凄く地味です。それでも私が飽きずに観ることが出来たのは、
丁寧な描写が積み重ねられているからだと思いました。
風のはためき、主人公だけではない色々な人の細かな動き……画面の中の情報量が濃密です。
特に関東大震災の描写は凄まじく、ここでの群衆の波は目を見張りました。
また、二郎と菜穂子の婚儀のシーンも中々です。
正式な婚儀のやり方? を観たのは初めてです。
昭和の世界観の描写も良く、現代とは違う魅力を味わうことが出来ました。

②声優
今回主人公の声を演じたのは、『エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督です。
「あぁ、駄目だなぁ」と思うところもあれば「おぉ、良いかも……」と思えるところもあり。
主人公の声が全く受け入れられない人の気持ちも分からなくもないのですが、
個人的には全否定する気持ちにはなりませんでした。

だって、良い部分もあったんだもの! 
そりゃちょっと滑舌が「?」となるところもあったけど!
でもグッとくるところもあったんだよ!


それ以外の声優陣は、個人的には完璧だと思っています。
今回みんな素晴らしいです。
西村雅彦さんや風間杜生さんといったベテラン俳優の方々は問題なしだとは
思っていましたが、最大の収穫はやはり菜穂子を演じた瀧本美織さんです。
瀧本さんの声優演技は、かつて宮崎作品で印象的だった
島本須美さんの声を個人的には彷彿とさせました。
他にも國村準さんは味がありますし、西島秀俊さんも良かったですねぇ。
しかし二郎の妹を演じていたのが志田未来だと知って驚きました。やっぱり上手いですね。

そういえば戦闘機の効果音、人間がやってたんですよね。全く気になりませんでしたよ。

予備知識は必要か?
今回、戦争が激化していくシーンや戦争の面影を感じさせる描写はほぼありませんでした。
会話の中で出てくるぐらいでしょうか。また震災に関しても詳しい状況説明はありません。
それに二郎を尾行しようとする特高の説明もないですし。
でも、その戦争が第二次世界大戦だったり震災が関東大震災だったり
特高が「特別高等警察」であることは、昔勉強してることなんですよね。
だから普通分かることではあるんですよ。私は一瞬「特高」を思い出すのに考えましたが。
ただ一応事前に戦前~戦時中の知識を少し学んでおいても良いかもしれないですね。
その当時の経済状況や人の様子も映画では描かれますので。


全体的に地味な映画です。しかし、なんともいえない魅力があるように思えます。
丁寧な描写、ギリギリの省略演出など、それを観てるだけでも面白かったです。
「ジブリといったら冒険活劇や子どもが喜べる作品!」と
思って観に行くと期待外れに終わる可能性も……。

押井守監督が『スカイ・クロラ』で文芸映画を作ったように、
宮崎駿監督も同じことした的な、そんな作品です。
まぁ確実に偶然なんでしょうけど、やっぱりこの二つに何かを考えてしまいます。

興味のある方は、是非どうぞ。

風立ちぬ スタジオジブリ絵コンテ全集19風立ちぬ スタジオジブリ絵コンテ全集19
(2013/07/31)
宮崎駿

商品詳細を見る


スカイ・クロラ (通常版) [Blu-ray]スカイ・クロラ (通常版) [Blu-ray]
(2009/02/25)
菊地凛子、加瀬 亮 他

商品詳細を見る
スポンサーサイト

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

ヤギメロ

Author:ヤギメロ
映画とか本とか、色々好きな者だす。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード