『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』にハマっています。

突然ですが、私はホラー映画が苦手な方です。

そんな私でも好きな「ホラー映画を撮る監督」がおりまして
(そういうのがいるならむしろ楽しんでるのは? というツッコミは無しで……)、
それが黒沢清監督です。ホラー映画としては
ちょっと変わってるものを作ってるからでしょうか。
そして最近、新たにホラー映画を撮る監督でお気に入りの監督が増えました。
それが「白石晃士」監督です。

この白石監督はPOVの名手、として注目されている方です。
POVとは「Point Of View」の略。
カメラの視点と登場人物の視点が一致したようなカメラワークによる撮影方法です。
この方法を使うと、作中ある登場人物がビデオカメラを手に持って常に撮影しているので、
観客はそのカメラを通して物語を追う……といった作品が作れます。

この方式を使った作品で有名なジャンルは「フェイクドキュメンタリー」。
ご存知の方も多いと思いますが、ドキュメンタリーの形式にのっとって
フィクションの物語を展開していく手法です。
有名なものでいったら『ブレアウィッチプロジェクト』でしょうか。
あちらはフィクションとドキュメンタリーの境界線を限界まで
曖昧にした作品でした(そしてグラグラのカメラで酔う)。

「どう考えたってフィクションだろ!」って話をリアルに描いた作品もあります。
『クローバーフィールド』とか、最近だと『クロニクル』だとか。
前者は怪獣モノ、後者は超能力が出てくる青春モノ兼SFスリラー。
これらの作品群を見て分かる通り、POVという手法は
「誰が、なぜカメラを持って撮影しているのか?」という設定さえクリアすれば
どんなジャンルでも撮ることが出来る手法です。
もちろんそれだけで面白いものが作れる訳ではないですが……

白石晃士監督はこのPOVを使って色々なフェイクドキュメンタリー作品を撮ってきました。
そんな監督が手掛けているのが「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズです。
私、これにすっかりハマってしまいまして。

ある映像制作会社のトンパチディレクター、そのDに敢然と反論しちゃう新人女性AD、
冷静かつ普通のカメラマンの三人が一般人からの投稿映像に映った
怪奇現象の謎を追いかける……というのが基本プロット。
オリジナルビデオで出されており、レンタルDVDショップの
ホラー棚によく置かれている作品群とさして変わらないあらすじですね。

なぜホラー映画が苦手な私がこれにハマったのか?
それはホラー映画としての怖さ以上に「作品としての面白さ」があるからです。
現在このシリーズは5作ほど世に出されてまして、
今度劇場版(最初聞いた時嘘だろと思いました)も公開されます。
その公開前に自分自身が振り返るという意味も兼ねて、
簡単に作品の感想を記したいと思います。


1作目『口裂け女捕獲作戦』
街中に現れた長身で足が速く、口を隠した髪の長い女。
これは現代に蘇った口裂け女ではないか? ということでこれを捕まえようという話。
捕まえるってなんだよ!」とそのタイトルと
あらすじにツッコミを入れたくなりますが、物語の展開は割と普通のホラー。
このシリーズのなんだかよく分からない勢いの代表格であり主人公
「工藤仁」ディレクターのキャラ性を筆頭に、各要素がまだおとなしい。
1作目ということもあってか探り探りの状態といったところでしょうか。
しかし所々に監督が「やりたい・作りたい」部分も感じさせ、そこが見逃せません。
海外ドラマでいうところのパイロット版ですかね。

2作目『震える幽霊』
古い建物に現れた震える幽霊の正体を追ううちに、
一人の女性の謎に近づくことに……という物語。
当作品からこのシリーズは大きくハネます
1作目で見受けられた各要素が全てにおいてエネルギッシュに。
工藤Dの暴走、投稿映像をきっかけに壮大な話に転がっていく物語展開と、
置いてかれそうになること間違いなし。
当時だからこそ出来たのかは分かりませんが、
東京スカイツリーをモチーフに使った宇宙スケールな設定、
そのスカイツリー前での一瞬の決戦など、見どころ満載。
また、ホラーとしても不安感を煽る感じが前作よりもありそこも中々です。
ちょっと大きいテレビで見ると気まずいシーンがあるのがこのシリーズ唯一で、そこも珍しい。

3作目『人喰い河童伝説』
河童が現れた! その真相を突き止め、捕まえろ! ……という話。
「一体どういうことなのか……」と唖然とする人が多そうなタイトル。
2作目で跳ねた勢いそのままに、1作目のような怪奇キャラクターとの戦いを描きます。
今回は登場する河童がモンスター映画に登場する化け物のような
不気味さと強さを有しています。
そんなモンスターに人間・工藤Dがどう挑むのか? 
前作で色々あって入院した工藤Dの復活劇、闘う者同士の友情、
人間対河童の異種格闘技戦(どうやって戦うかは観てもらえれば……)などこれも見所満載です。
新人女性AD「市川」が河童に
連れ去られそうになるカメラの主観映像は一瞬ですが、圧巻

4作目『真相! トイレの花子さん』
廃校になる出身中学に夜中忍び込んだ女の子2人。
そこで2人はトイレの花子さんを目撃する。
その翌日、2人のうちの1人がもう1人の女の子が
首を吊った幻を見てしまい……という話。
人それぞれの思い入れは各作品違うとは思いますが(私は3作目が一番好き)、
冷静に考えてみると現時点でこの作品がシリーズ最高傑作ではないでしょうか。
女の子の命が危ない、ということで助っ人の霊能力者、
女の子2人と共に廃校にやって来た工藤一行。
しかしその廃校は空間と時間が歪んだ世界となっていた!
ここから女の子の命を救う為に時空を超えた小さい冒険が始まり、
約30分のノーカット映像が始まります。
女の子の友情、どうやって編集したのか分からない昼夜逆転していく映像、
そして時空を超えた果てに辿り着く衝撃的な光景……ととにかく忙しい内容です。
いつもの主人公3人がそんなに活躍していないという点で不満な部分はありますが、
それでもこの3人がいるからこそ……というシーンもちゃんとあります。

5作目『新説・四谷怪談 お岩の呪い』
ある映画の撮影中に映った謎のシルエット。
それがお岩ではないかということで調査開始。
だが調査途中、AD市川が霊に憑かれてしまった!……という話。
劇場版序章! TVドラマでいうところの劇場版に繋がる
TVスペシャル的な位置づけかと思います。
前作であんまり暴れなかった工藤Dが今回は大ハッスル
しかも男気すら見せてくれます。
前作同様に信じられないかつ進化した光景が出てきますが、
その中でも工藤は工藤ってところを見せます。
監督自ら『ヱヴァンゲリヲン:破』に影響を受けたというクライマックスは燃えます。
(個人的には初鑑賞時『もののけ姫』? と思ったりしましたが……)


という訳で今まで出た作品を振り返りました。
なんか変な物語がいっぱいのように思われたでしょうが、
大事なのはこれが「低予算」で撮られているところ。
どんな人でも映像を観たら「金はかかってないんだろうなぁ……」とすぐに分かります。
スタッフロールを見ると分かるんですが、
撮影・編集・VFXを白石監督がほぼ1人で手掛けています。
にも関わらず「低予算だからなんだ!」と
いわんばかりの物語が展開されています。しかもそれが面白いときている。

そもそも白石監督、手持ちカメラによる撮影が抜群に上手い。
だから偶然に何かが映り込んだ……という怖い演出も出来てしまう。
その部分をしっかりと考えられていないと作るのが難しいのが
POVという手法だと思うのですが、それをちゃんと扱っています。
(ちなみに白石監督はカメラマン「田代」役としても出演。怯える演技が上手い……)
他にも実在感の高さを感じさせるナチュラル演技をするゲスト役者達、
ぶっ飛んだシナリオ、ベースとなるホラーな演出等作品を形成する各要素で
決して手を抜いたりしない姿勢が作品の面白さに繋がっているのではないでしょうか。

連続ドラマとしても面白いです。
それぞれの1話完結の物語の中にキャラクターに纏わる謎・今後の展開も匂わせていて、
ドラマとしての縦の糸もちゃんとある。
先が気になる・結末が気になる・そもそも1話1話が面白い、という
「良く出来た連続ドラマシリーズの典型的構造」を
(意図してるかどうかはともかく)しっかり抑えているのではないでしょうか。
今回公開される劇場版では今までの謎が一旦は明かされるということで、楽しみです。

他にも「実は監督が好きなクトゥルフ神話に影響を受けている」とか
掘り下げたいのですが、私がそれについてあんまり詳しくないのでここで止めときます。
興味のある方は1作目と2作目の両方を借りて一気見するのが良いかと。
1本70分くらいで観やすいですよ。


『テケテケ2』→『カルト』の順で白石監督作品を観ました。『カルト』もおススメです。
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大迫茂生、久保山智夏 他

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