『GARM WARS(ガルム・ウォーズ) 白銀の審問艦』を読む。/2つで1つのGARM

※注意
本記事には小説版と映画版双方の『GARM WARS』に対する印象が書かれています。
前情報を一切知りたくない方は読まない方が良いかもしれません。


昨年の東京国際映画祭でプレミア上映された『GARM WARS The Last Druid』。
未だに正式な劇場公開が決まっていない現状を考えると、
行っといて良かったなぁと思っています。
そんな『GARM』の小説が一足先に発売。著者はもちろん映画版も手掛けた押井守監督。
ノベライズ版が先に出るってのはあるにはあるんでしょうけど、
公開が未定ってのは中々無いような。

先日押井守監督が軍事評論家岡部いさくさんと毎年催している
シークレットイベント『Howling in the Night 2015』に行きまして。
その時に今回の『GARM WARS 白銀の審問艦』が先行販売されていました。
それを購入し読んだ訳です。映画版を鑑賞出来たという貴重な体験をした訳ですし、
小説版も出るなら買わない道は無いということで。
以下、「more......」より感想です。


<あらすじ>
部族間で覇権争いをしていた惑星「アンヌン」の住民「ガルム」達は、
天空より飛来する謎の脅威「セル」との戦闘の為に共同戦線を張り、
生き残りを賭けた戦いを続けていた。戦いの最中、空を制する部族「コルンバ」が
セルを惑星へ導くと謂われる「マラーク」が乗る艦を撃墜する。
敵の正体を探る最大の機会を得た中央参謀本部は、
情報技術に長けた部族「クムタク」であり
かつて異端者として本部が追放した男「ウィド」を召喚し審問官に任命する。
ウィドは、撃墜された艦の墜落現場へ赴いた関係者達への審問を開始する……。
(あらすじ書いているだけで頭が熱を上げそうになりましたが何とかなりました。
その理由は後述します……


映画版『GARM WARS』(以下、『ラストドルイド』)は主人公達の「旅」を通して
舞台となる惑星の謎やそこに生きる住民達の起源を探る物語でした。
ロードムービー的側面が強い作品だったんですね。
一方小説版(以下、『白銀の審問艦』)は舞台となる世界を巡りつつも
それがメインではなく、まさかのミステリー仕立ての物語でした。
敵の艦の墜落現場では何があったのか? 関係者はそこで何を見たのか?
主人公のウィドがそれを調べていくことで謎が次第に明らかになっていき、
それが長きに亘るセルとの戦いの意味に繋がっていきます。

<100%の異世界ファンタジー>
映像によって異世界を描いた『ラストドルイド』。
対照的に『白銀の審問艦』は小説なので、当然文章によってその世界観が描写されます。
惑星アンヌンの起源と戦いの歴史、ガルムとは何か、
かつて8つあった部族が3つにまで減った理由、
ガルム特有の文化など……その説明と共に物語が進んでいきます。
結果、始まりから終わりまで、脳みそをフル回転させ想像力を働かせながら
本作は読むことになります。所謂ガチのSFファンタジーです。
それはとにかく疲れる読書体験だったのですが、銃・戦車・戦艦・甲冑・戦闘機と
ミリタリー色の濃さと機械的な技術要素で構成された世界観設定は魅力的で飽きませんでした。

著者である押井監督の小説は従来薀蓄がとても多いです。
例えば主人公が銃を使うとします(使わないことがない気もしますが……)。
その場合監督のガンマニアっぷりが炸裂しまして、その銃はどういう形状しているのか、
どういった性能なのかを詳細に描写するのです。
これは銃以外の場合にもいえます(近作だと『番狂わせ』はサッカー、『ゾンビ日記』は身体論)。
今回はその「薀蓄的要素」が、あるにはあるものの全体的に少ない印象です。
その代わり、本作では異世界の描写にページが割かれています。
この本を手に取った人は初めて『GARM WARS』の世界を体感する訳ですから、
そうなるのも当然の成り行きです。読者が全く触れたことのない
異世界のイメージを持たせる為の監督の苦労が感じられます。

それでも難しさを感じた人の為に!
巻末には世界観や登場人物について書かれた 「巻末解説」が付いています。
時間やメートルの単位についてなど、専門用語の説明もあって非常に親切。
ネタバレ的な説明文も無いので、最初にこれを読むのもアリかと。
先述したあらすじもこれがあったから助かりました。
ところでこの巻末解説を構成・執筆された方、
桑島龍一さんと吉祥寺怪人さんのお二人なのですが
私が購入した本では「寺祥寺」になっていました……早く直した方が良いかと……。

映画版を観た自分からすると『白銀の審問艦』は世界観等を文章で説明してくれているので、
もう1回『ラストドルイド』を観たら(2回目ということも加味しつつも)、
すんなり入っていけると思います。本作は
「いつか公開するはずの」映画版の副読本として使えるでしょう。
かつて監督が制作した早過ぎた傑作(注:自分調べ)『Avalon』の
映画版と小説版の関係と似ていますね。

<『ラストドルイド』と『白銀の審問艦』を比べてみて……>
『ラストドルイド』では主人公達が戦車に乗り陸を走ります。
一方『白銀の審問艦』は白銀の装甲を纏った武装審問艦「イムラヴァ」によって空を駆けます。
時折差し込まれる空からの異世界の描写は映画じゃ無い場面もあり、
映像で観たい……」と思わせるものが多いです。

物語展開ですが、全体の話運びは『ラストドルイド』と同じ。
しかし細部がかなり異なるので同じ世界を舞台とした全く別の作品を読んだ気分です。
そして『ラストドルイド』と同様に生命の象徴として「犬」が出てきます。
この犬の使い方について、早く『ラストドルイド』と『白銀の審問艦』で
じっくり比較したいですね。
余談ですが『ラストドルイド』は(CG云々ではなく)映像特有の力強さがあり、
役者が演じることによるキャラクターの個性が印象に残っています。
本作を読んでてもウィドがランス・ヘンリクセンで想像されましたよ。

<まとめ>
長文になってしまい申し訳ありませんでしたと謝りつつ、まとめです。
『Avalon』は個人的には小説版が無くてもあの映画1本だけで
存在を確立していると思っています。今回の『GARM WARS』は
『ラストドルイド』と『白銀の審問艦』、この2つによって完成する作品なのかもしれません。
とりあえず1度読み終わった時には劇的な終わり方にグッと来た訳で、
これはこのままひっそり埋もれてしまうのは非常にもったいない。
観てから読むか、読んでから観るか、をする為にも、是非どうぞ。


GARM WARS 白銀の審問艦GARM WARS 白銀の審問艦
(2015/04/04)
押井 守

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