『オデッセイ』 ~「生き残る」と「助ける」~

2016年を迎えましたが、リドリー・スコット監督の最新作『オデッセイ』を鑑賞しました。
ネットで話題を呼び、書籍化されて更に人気を呼んだというSF小説『火星の人』が原作。
映画版は本国で公開後、高い評価を獲得しました。そんな話題作が遂に日本公開。
早速観てきました。公式サイトはこちら


宇宙飛行士で植物学者でもある「マーク・ワトニー」が
一人取り残された火星で過酷なサバイバル生活を送り、地球に帰るまでのお話。
並行して、ワトニーを救出する為のNASAの奮闘も描かれる。

様々な障害を知恵と勇気で乗り越えていく全体の作風は基本的に大好き。
特に注目したいのが、困難に立ち向かう主人公の姿勢だ。

映画の中では絶望的な状況が発生し、ワトニーが悔しさに声をあげる展開がある。
しかし彼はその悔しさをいつまでも引っ張らず、次の対策を考え始める。
なぜなら酸素も無い場所で諦めるということは、死を意味するからだ。
だからこそワトニーは考えることを止めない。
気持ちを切り替えて次の対策を練り、実行する。
この姿が主人公がプロフェッショナルであることを証明する一方で、
映画の雰囲気に影を落とし過ぎないバランスを保つことにも繋がっていた。
無言で考えに耽る姿を1カット挟んでくる監督の演出の細やかさにも感心させられる。

映画全体はワトニーの根の明るいキャラクター性や
人物同士のコメディ的なやり取りの多さで、陽性な雰囲気を最後まで貫いている。

しかし火星や宇宙は地球と比べて危険な場所であることも
一方で再三描写されるので、ワトニーを筆頭とした宇宙飛行士達は
常に死と隣り合わせであることを観客側は意識し続けることになる。
それがポジティブでありながら緊張感を決して失わせない
絶妙なラインに本作を立たせており、最後までその立位置がブレることは無かった。

キャスト面では、『アントマン』での活躍が記憶に新しいマイケル・ペーニャが印象的。
ワトニーの仲間のクルーとして出演しており、
冗談を飛ばす一方で機転を利かせた活躍を見せてくれる。
対象的にシリアスなドラマパートではショーン・ビーンが良い味を出していた。
火星に取り残されたワトニーや、
結果的にワトニーを置き去りにしてしまった火星探査チームのクルー達を
思いやるNASAのスタッフとして渋カッコいい。

この2人を代表として、ワトニーを助ける為に奮闘する人々の中で
要らないキャラクターが1人もいなかった。
例えば仕事を進めるNASAの各セクションには主役格になるキャラクターが必ず1人いて、
それぞれ自分のスキルを駆使する場面が描写されている。
その為、1人の男のサバイバル映画でありながら、
プロジェクト成功に挑む群像劇としての面も併せ持っている。
ワトニーが生き残る為に見せてくれる科学技術についてだけでなく、
「誰が今回のプロジェクトで活躍したか?」ということも
鑑賞後に語り合うのに良いんじゃないかと思う。

舞台となる火星の風景も素晴らしい。
調べてみて知ったのだが、
本作の火星はヨルダンのワディラムという場所で撮影されたという。
主人公が移動用車両に乗り込んで火星の大地を進んでいくシーンは
果てしなく続く赤い世界を特に雄大に映し出していて、目を奪われた。
このただ進み続けていくシーンを5分ぐらい掛けて描写していたら、
押井守監督作品の「ダレ場」になるのだろう。多分。

主人公が生き残る為に様々な策を講じることが「科学する」という動詞と
そのまま結びつくような知的な物語構成になっており、
かといって決して堅苦しくなり過ぎない作風で進んでいくので、
とても観やすかった本作。
宇宙は怖い。しかし、夢や希望を抱く対象となり得るのも
また宇宙であることも教えてくれる映画だ。
サバイバル映画を観たと同時に
NHKのドキュメンタリー『プロジェクトX』を視聴した感覚があり、1つで二度美味い作品である。


ということで『オデッセイ』、笑えるところが多いのと同じくらい
科学実験的な映像で頷かせてくれることが多く、知的好奇心をくすぐられました。
お薦めの一作ですので、興味があれば是非どうぞ。
やっぱりリドリー・スコット監督の宇宙船描写は最高です!
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