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ある1人の人生『ストーナー』感想

(某所で書いたものの転載+ミックス)

『ストーナー』(作品社)
ジョン・ウィリアムズ著
東江一紀訳

「それを見定めたきみの愛はいっそう強いものとなり、
永の別れを告げゆく者を深く愛するだろう」
「シェイクスピア氏が三百年の時を越えて、
きみに語りかけているのだよ、ストーナー君。聞こえるかね?」
(第1章 14~15ページより引用)

某会でこの本について語る人1人1人の方の顔が活き活きとしていて、
そんなに凄い本なのかと思いつつ、いつか読もうかなレベルに考えていました。

少し前に同作者の『ブッチャーズ・クロッシング』を読み、
目に入った文章が頭の中で像を描き始める表現力に驚く。
これは『ストーナー』を読まねばと思い、
幸運にも同じ会で貸していただく。

心の中に灯った好きなものに対する情熱という名の火。
その灯火に対して不器用ながらも誠実であり続けようとした
ストーナーという人の人生を描いた小説です。
彼が通り過ぎていく1つ1つの転機が、
読んでいる自分自身の人生と交差し、
過去そして現在のあの日の幸福や失敗を思い出す。
それが辛くもあり愉快でもあり・・・時を経て実家に帰省した時の
感覚が妙に馴染む。

輝かしい経歴は無かったかもしれない。
沢山の人に評価された訳ではなかったかもしれない。
けど、だからなんだというんだろう。
自分の中の火を消さずに生きたということ。
それが大切なんじゃないか・・・と考えてもみたり。
私の好きな映画監督が「自分が今まで映画を撮り続けることが
出来たのは映画に飽きなかったから」というようなことを
昔インタビューで話していて、その言葉を本書を読んで思い出しました。

時代の空気や現実の煩雑な問題に圧し潰されそうになっても
自分が信じるものを裏切りたくないという強い意志が、
たとえストーナー自身が流暢に表現出来なくても端々から感じて、
自分は自分が好きなものに対してこんなにも執念を燃やせるだろうかと。
探究することが職業だけに留まらず、
生き方にまで昇華しているように見えたのも印象的でした。

そんなストーナーが出会う登場人物のイーディスとキャサリン。
彼女達の存在が彼の清濁併せ持った人間的な面を浮かび上がらせているようで、
2人を筆頭に、多くの様々な周辺人物との交流・衝突が
そのままストーナーという人間と彼の中の価値観を
描くことに繋がっている。その描写の仕方も好きです。
出会いと別れ、成長と老い、記憶と愛着、
登場人物1人1人の性格....切り取れば様々な部分で語れる魅力を持った、
まるで本当に在った人生ような小説だと思いました。

あなたは自分の好きなものが自分に
語りかけてきたような瞬間、覚えていますか?

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映画とか本とか、色々好きな者だす。

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