戦争映画ベストテン!

男の魂に火をつけろ!」さんが行なっている毎年恒例の映画ベストテン企画。
今年も投票が始まったので参加することにしました。
今回は『戦争映画ベストテン』。

この企画を切っ掛けに少し考えたのですが、
自分って戦争映画をあまり鑑賞していないことに気付いてしまいました。
別に嫌いなジャンルって訳じゃないのに、
他のジャンル映画よりも後回しにしてしまっている感じがしなくもないです。
自分の観た数少ない戦争映画の中で(ソレはそもそも戦争映画なのか問題もあったりしますが)
印象的な作品を挙げたいと思います。


1.続・夕陽のガンマン(1966年 セルジオ・レオーネ)

2.この世界の片隅に(2016年 片渕須直)

3.レッド・アフガン(1988年 ケヴィン・レイノルズ)

4.戦場のピアニスト(2002年 ロマン・ポランスキー)

5.プラトーン(1986年 オリバー・ストーン)

6.クリムゾン・タイド(1995年 トニー・スコット)

7.プライベート・ライアン(1998年 スティーヴン・スピルバーグ)

8.ロード・オブ・ウォー(2005年 アンドリュー・ニコル)

9.イングロリアス・バスターズ(2009年 クエンティン・タランティーノ)

10.アメリカン・スナイパー(2015年 クリント・イーストウッド)


1はこの前観たばかり。
物語が大きく動き出す始まりにも戦争が絡んでるし、
主人公格2人が旅する中で常に戦争の匂いが充満しているのも妙に印象的。
クライマックスの決闘にはハラハラするのですが、
旅の終わりが墓地ってのも恐ろしい。

2は観たばっかりじゃねぇか! 
……という突っ込みを受けてしまう可能性が高いのは重々承知しています。
しかし、やはり本作に心を揺さぶられたのは事実。
人々の身近な暮らしをじっくり描きながら、いたるところで戦争の影を感じさせ、
空からは爆撃が降り注ぐ。ずっと続ていく日々の暮らしこそが
市井に生きる人々の戦いなんだということが真に迫ってくる作品でした。

3は旧ソ連のアフガン侵攻を描いたアメリカ映画(なのでソ連軍人の言葉も英語)。
『マッドマックス怒りのデスロード』に出てくる暴走車両の如く戦車が荒野を爆走し、
村落に襲撃をかける。
モンスターのように描かれる戦車に対して人間達が総力を結集して挑む、
戦争を背景とした戦車狩り映画の傑作。

4はただピアノを弾きたいだけなのに弾かせてくれない哀しさ。
同時に主人公にとっての最大の武器が「ピアノ」であることも泣かせる。

5はベトナム戦争モノですね。
戦闘シーンが壮絶なのはもちろん印象的なのですが、
個人的にはその戦闘以外、特殊状況下でのある種閉鎖された人間関係のいざこざに
目がいきました。

6は架空の状況を描いているけれども、
国家間の緊張状態を背景に揺れ動く人間達の心理を描いているし、
これも戦争映画……ではないでしょうか。

7はノルマンディー上陸作戦が「地獄」という言葉で
表現するのも生温いくらいに壮絶さに溢れていて、
観る人の心をゲンナリさせながら掴んで離さないのが恐ろしいです。
冒頭だけで映画1本分鑑賞したような気分になります。

8は一度武器を売り始めたら、
どこまでもどこまでも「戦争」が背中についてくる感じが非常に恐ろしく、
終わり方含めて妙に印象に残った一作。
ホラー映画を観たような気持になります。

9は戦争という状況を楽しむ者、戦争によって全てを奪われた者の双方が描かれ、
どんな場所でも一瞬にして戦場に様変わりしてしまう緊張感が凄まじかった。
映画の中で映画でしか出来ないケリのつけかたを見ましたね。

10は淡々と描かれる物語が淡々と狙撃手を務める主人公の姿と重なって、
逆に深く心に残りましたね。


以上のように書き出してみましたが、戦争それ自体を描いた作品よりも、
戦争によって多大な影響を受けてしまった人々の物語の方が個人的には好きみたいです。
『レッド・アフガン』も戦車の爆走が凄いのと同時に、
戦場での出来事によって人間の精神性が豹変していく様や
生まれるはずの無かった友情を描いていますし。
後は描写が攻めた戦争映画とかですかねぇ(『プライベート・ライアン』とか)。

ちなみに「戦争に多大な影響を受けてしまった人々の物語」でありながら、
「描写もかなり攻めている」作品が『この世界の片隅に』ですからね。
だから入れざるを得ませんでしたよ。好き、大好きです。

以上、集計大変かと思いますが、よろしくお願いいたします!

全く更新していなかったので『君の名は。』以降に鑑賞した映画の感想を簡単に残す。

『君の名は。』鑑賞後も劇場にはちょくちょく足を運んでいたのにも関わらず、
このブログを全く更新しないまま。ページを開けばトップに出るのは記事ではなくて広告。
アラートのように「あ、しまった!」と気付かされた次第であります。
ということでタイトル通り、最近観た作品の感想を簡単に残します。


『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影』
前作を観ていないのにも関わらずに鑑賞。
基本知識は昔見ていたアニメとスーパーファミコンで発売していたゲーム版のみ。
じゃあなんで観に行ったのかといえば、
上2つに登場していた敵キャラクターが本作から登場し、
大分自分の知っている要素が予告編から垣間見えたので、足を運びました。
あと評判も良かったので。
とにかく画面の中でありとあらゆるものが何かしら動きまくっています。
だから非常に軽快に物語が展開していて気持ちが良い。
落ちる、上がる、投げる……等々の色んなアクションも激しいながら見やすくて、
ジェットコースタームービーとはまさにこのこと! と思いましたね。
本国での興収があんまり良くなくて続編が
作られないかもしれないらしいですが、観たいですねぇ。

『超高速! 参勤交代リターンズ』
こっちは前作を観ていて、そちらは笑いあり涙あり本格的な殺陣ありと、
かなり楽しめた娯楽活劇。今回はその続編で、前作を観ていることが
必須なところから物語が始まります。
前作以上にアクションも豊富になって見応えのある殺陣にワクワクする一方、
時間制限サスペンスでハラハラして前作とは一転してそういう要素が無くなり、
話の勢いがかなりパワーダウンしてしまった印象。
役者陣は素晴らしかったのでこの面子で
全く別の新作を作るでもよかったような気がします。

『スーサイド・スクワッド』
海の向こうで公開してから色んな評判がどんどんネットを介して日本に流れてきて、
その情報に一々ため息を漏らしながらも観に行った一作。
批判されている部分も確かに分かるなぁと思いながらも痺れる描写もあったりして、
今年の自分にとっての偏愛映画枠にランクイン。
やっぱりキャラクターが良いとドタバタしてるだけでにやついてしまいます。
逆にいえば、キャラクターに依存し過ぎて物語の盛り上がりを
放棄しているといっていいのかもしれないですが。
追加シーンを加えたエクステンデッドカット版なるものが出るそうですが、
製作会社のワーナーブラザーズはもう少し
マーベル映画の作り方を学んだ方が良いと思いました。
バットマンさんに説教していただきたい。

『怒り』
予告の時点から「私は傑作です!」という宣言が画面から流れてきているようで、
そのあまりの力強さに思わず劇場に足を運んだ一作。評判も良かったので。
確かに評判通り役者陣の熱演は素晴らしく、と同時にあまりにも濃かったです。
だから素晴らしいんだけどみんな味が濃過ぎて「じゃぁ誰が良かった?」といわれると、
濃い面子の中で純朴な演技をして結果的に印象に残る薄味になった佐久本宝さんが
良かったなぁと思いました。
濃いのは演技だけでなくて坂本龍一さんの音楽も素晴らしいのですが
やっぱり胃もたれするほど濃く「そこまで鳴らさなくて良いのでは?」と思ったり。
あと別々の場所で起こる3つの物語を編集して
1つのタイムラインに乗せた構成にしてるのですが、
ある物語からある物語へ転換する飛び方が気になるほどの違和感があり、
そして1本のように見せている割にはエモーショナルが生まれてる感じもせず、
どうせなら完全オムニバスにした方が良かったのではと思いました。
ソフトでそういう風に収録されないでしょうか。

『こえの形』
『君の名は。』は最大瞬間風速的ロマンチックな
気持ち良い映画だと思っているのですが、こっちはボディブローのように
ジワジワと効いてくる作品でした。鑑賞直後も後を引っ張る感じ。
登場人物がみんなどこか駄目な部分を持っていて、それが生々しく、
そんな彼らが感情の反発と受容を繰り返すので色々と揺さぶられました。
手話を扱っていますが、色んなコミュニケーションの形を描いた傑作なのではないかと思います。

『CUTIE HONEY -TEARS-』
これ監督が2人いて、そのうちの1人が
国内トップクラスのCG製作チーム『白組』の人なんですよ。
舞台が近未来の街なのでCGがふんだんに
使われているのですが、かなり良いVFXで驚きました。
内容的にそんなに大予算組まれている訳ではないと思うのに
撮影場所を工夫したりして、近未来感をちゃんと演出していて良かったですね。
ただ『キューティーハニー』かといわれるとかなり違うような気がします。
上層と下層に分かれた街で、下層の人たちが上層に乗り込む反体制ムービーといいますか。
一応ヒーロー映画っぽい要素はありますけどね。

『SCOOP!』
テレビ朝日が製作に関わっていて驚きました。
音楽が良くてサントラも買っちゃいましたよ。福山雅治さんがワイルドに決めてましたね。
前半は週刊誌に載せる為の写真を二階堂ふみさん演じるアシスタントと共に撮りまくり、
爽快感ある展開が続きます。それが終盤に向けてお仕事ムービーから
捨てきれない男の友情ムービーに変わっていくのは驚きましたね。
ただ前半で撒いた要素を後半で回収することに終始しちゃってる感じがして、
中盤からパワーダウンしていったように感じたのが残念でした。
あと映画全体でいうと1つ1つのエピソードが連続していないといいますか、
1つだけで完結している印象。これ出来ることならば
連続ドラマで観たかったなぁと思いましたね。
30分ぐらいの深夜枠の連続ドラマだったら、
上に書いた印象もプラスに転じていたかもしれないです。

『HIGH & LOW THE RED RAIN』
いま日本でこんなアクション映画が観られるとは思いませんでしたよ。
とにかくいえることは雨宮兄弟、最強! ということ。
肩揺らしながら敵陣に向かう感じに『あしたのジョー』のノーガード戦法で
ジワジワと歩いてくる矢吹丈を見ましたね。
あと割と意識的にマーベル映画っぽい次回へ続く引きをやるんだなぁと思って、
そこが興味深かったです。

『ダゲレオタイプの女』
黒沢清監督の作品は『リアル 完全なる首長竜の日』から
ハマってしまいましたが、今回が近年の中で一番最高に感じられた一作でした。
今までは「~的な部分はイマイチだけど、ここが最高だから良い!」
というのがあったりしまして。『セブンスコード』は素晴らしかったですけどね。
というかアレがこれを観る前までの近年での「最高!」
と思えた作品でした。次点で『岸辺の旅』。
この監督には定期的にオリジナル撮って貰いたいなぁと祈るばかりです。

『デスノート Light up the NEW world』
頭脳戦を描いた前作から10年経って、
続編は前作肉体派の面々が頑張って頭脳戦をやろうとする話になりました。
中途半端にそういう要素を入れるよりも、
「デスノートに名前を書く」という行為にクローズアップして、
純粋なアクション映画にしてしまった方が良かったのではないでしょうか。
それだったら多分私この映画好きになっていたかもしれないです。
でも脚本以外の監督、音楽、役者は素晴らしかったです。
演技に関して色々言われがちな東出昌大さんですが、
もうこの人は立派な俳優さんだと思いますよ(なんて偉そうですが)。
正直これからの出演作は気になり始めてます。


という訳でざっと振り返りました。
どれも満足度が高くて「2016年凄い!」と思わざるを得ません。
今週からは『ボクの妻と結婚してください。』
来週は『この世界の片隅に』と個人的な注目作が目白押し。
12月31日まで映画から目が離せないですね。
興味があれば是非劇場へどうぞ。

映画『君の名は。』を観に行きました。/新海誠監督の新たなるスタート……と思いたい。

<本編の内容に少し触れながら作品の印象について書いているので、ご注意ください>


『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』の
新海誠監督最新作『君の名は。』がたくさんの劇場で公開されました。
新海監督の作品が数多くの劇場で上映されるということに最初は驚きましたけど、
そういえば『言の葉の庭』を観に行った時の劇場には、若い人が結構来ていました。
実際『言の葉の庭』もヒットしましたし、その客層を東宝は見込んだんでしょうね。

私としては新海監督が自主制作で初めて作った『彼女と彼女の猫』以外の作品は観ています。
光の眩しさが印象的な美しい風景を背景にして、
過去を抱えた登場人物たちの現実的なドラマが描かれる……というのはあるんですけど、
本質的にはファンタジーを作りたいって気持ちが前面に出てるのが堪らないですね。
時々物語が主人公自身の心情を掘り下げすぎる方向に倒れちゃうところが、
好き嫌い分かれそうだなと思いますが。
という訳で公式サイトはこちら

冒頭に主人公2人のモノローグが入って「いつものやつだ!
と思った瞬間にRADWIMPSの楽曲によるオープニングが始まってびっくりしました。
新海監督の得意とする曲に合わせたPV的編集がいきなり炸裂。
映像もオープニング用に作られた内容で、TVアニメのOPを見ているような気分になりました。
今回も曲に合わせたPV的編集が度々挿入されるんですけど、
個人的にはちょっと入れ過ぎではないかなぁとも思いました。
挿入すること自体は百歩譲るにしても、
キャラクターの台詞が聞き辛くなるのは不味い気がしましたね。

そういえば『秒速5センチメートル(以下、秒速)』では音楽が掛かり出す前に
コンビニエンスストア店内で流れてる曲として微かに流れてるんですよね。
そこから音が大きくなってタイトルがドンっと出る。
こちらの方がドラマチックだったような気がします。
『言の葉の庭』でもPV的編集がありましたけど、
やっぱり『秒速』の使い方が好きだったなぁ……と話が脇道に逸れましたね。すいません。

物語の根幹を成すSF的部分(もちろんそのままではない)は『ほしのこえ』、
会いたい人に会えるかもしれない場所へ向かう展開は『星を追う子ども』、
夢に出てきそうな幻想的な風景や季節の移り変わり、
過去を引き摺りながらも流れていく日常は『秒速5センチメートル』や『雲の向こう、約束の場所』、
万葉集のような古典をモチーフの1部にしているのは『言の葉の庭』、
離れた場所で暮らす無関係な男女2人という設定はZ会用のCM『クロスロード』を連想しました。
「建設」って単語が出てくるのは「大成建設」を思い出しましたね。
大成建設のアニメCMも作ってますし。

間違ってる部分もあるかもしれないんですけど、
とにかく至るところで新海監督の今までの作品の記憶の欠片を読み取れる部分が多かったです。
各々の欠片をただ作品に詰め込んだ訳ではなく、バランス良く使われていましたね。
そこに主人公達の独特なモノローグや、
眩しい光が印象的な美しい風景という監督の得意な技が加わって、
本作は 均整のとれたエンターテイメント作品に仕上がっているように思えました。
『星を追う子ども』で試していたキャラクターのバラエティーに富んだ表情の変化も、
コミカルな展開と相まって不自然さは無く、
今まで試していたであろうことの全てがカッチリハマったんじゃないかなぁって感じられましたね。
食事も美味しそうでした。

ストーリーはちょっと不思議な話からロードムービーへと変化し、
次第に壮大なスケールへとグレードアップしていきます。
例えそのように物語の様相が変わっていく中でも、
「(いつかは終わる日々としての)青春」「SF」「醒めてるようで全然醒めていないままの幻想」
といった要素は一貫していて、これが新海監督作品の味だよなぁ、
というのを改めて実感しました。
場面場面の繋ぎ方のちょっとしたズラシや夢に見る出来事が
ただ美しい光景を映すというだけでなく、お話の伏線として
機能しているのも良かったです(もちろんただ美しいものを流すのもアリですけど)。

本作はこれまでの新海誠監督作品同様に、美しい物語です。
そして今までと違う気がするのは、その美しさを保ったままエンターテイメント性を獲得したこと。
今までの作品をほぼ観ている自分としては今回のような内容になって嬉しかったです。

ただ、同時に不安もあります。
今回は本当に集大成ともいえる内容で、観終わった直後は
(監督がそうと決めた訳ではないにしても)これが
ゴールになってしまわないかと考えてしまいました。
しかしパンフレットに記載された監督のインタビューを読んで、
そ2の不安は少しだけ払拭されました。
というのも、『星を追う子ども』を作り始めた時期から
物語の作り方を勉強しているみたいなんですね。
その他の部分でも向上心が感じられました。
これが新たなるスタートとして、本作の面白さを噛み締めたいと思います。(噛みといえば口噛み酒……)

<その他色々思ったこと>
声優陣は全員素晴らしいです!
新海誠監督は初長編監督作『雲のむこう、約束の場所』から俳優を声優として
起用していますが(短編『ほしのこえ』でも)、人選が本当良いですね。
通常の演技はもちろん、女演技の神木隆之介さん、男演技の上白石百音さんが
特に良いです。長澤まさみさんや市原悦子さんも凄いですよ! 

PV的編集の多さはもちろんですが、それと同時に
クローズアップした扉の開閉カットの多さももうちょっと少なくしても良いのではと思いました。
線を越えて歩き出すのを表しているのでしょうけれども……。

<ここから特にネタバレ>
(1)こんなにも東京という街を煌びやかに見せた映画も久しぶりに観た気がします。
「東京だぁ……」というセリフに込められた都会への憧れ。上白石萌音さんの見事な演技でした。

(2)『言の葉の庭』に出てきた先生が登場してびっくりした。
  パンフレットによると意識して出した模様。

(3)終盤、「雪が降る夜」からの「桜舞う春」という場面転換で
否が応にも『秒速5センチメートル』を思い出す。
しかし2人が再会する場所は「踏切」じゃない。
過去を断ち切る象徴として出てきた「踏切」は
本作では似つかわしくないからなのかな、と思いました。

<ここまでネタバレ>


という訳で興味があれば是非どうぞ。

『シン・ゴジラ』を観に行きました。(ネタバレ注意)

※作品の内容に踏み込んだ箇所があります。ご注意を※


もう公開から随分経ってしまったような気持ちがありますが、
自分の感じたことは残しておいた方が良いよな、と思い備忘録的な意味で記事を更新。

色んな人が感想をネットに上げていて、
その人たちの感想を読んでるだけで面白くて仕方がないですね。
結果として自分の脳みそも刺激され、次はいつ観に行こうかと予定を考え始めてしまっている。
それほどの破壊力、吸引力が本作『シン・ゴジラ』にはあるかと思います。
公式サイトはこちら
TOPページに表示される「大ヒット上映中!」って、本当にそうだからグッときますね。

冒頭に、昔の東宝スコープのマークに、青色背景の白文字に「東宝映画作品」と立て続けに
往年のマークが表示されます。それから初代ゴジラを思わせる「シン・ゴジラ」のタイトルバック。
このあたり、「84年版『ゴジラ』を思い出すよね」と、一緒に観に行った友人と鑑賞後に話しました。
三度目のゴジラ初上陸が描かれることを示唆しているのでしょうかね。

物語が始まって、手持ちカメラの撮影映像を中心に事件の予兆が描かれます。
そういう描写が入ってしかもジャンルが怪獣映画となると、
思い出すのは海外の『クローバーフィールド』。
「あぁ、ゴジラ映画にしては珍しい演出だよなぁ」と思ったりしました。
そんなこと考えていられるくらいには、この時点まで冷静に映画を見ることが出来てました。

ところが、ですよ。本番はここから。
謎の生物がついに陸地に上陸、観てるこっちも「ついにゴジラがき……」

で、「――え?」と目を見開いちゃいました。
というのも、現れたのはポスタービジュアルで堂々とした立ち姿を見せた「ゴジラ」ではなく、
嫌でも印象に残る死んだ魚の目をした巨大な海棲生物だったのです。
四本足で進撃するソレは、ありとあらゆるものを壊し、
津波を起こし、どんどん街中へと入り込んでいきます。

「え? やっぱりVS物なの? 今回はゴジラ以外の出るから隠してたの?」
しかし、生物の外見にほんの少しだけ変化が生じた瞬間、私はハッとしました。
そうだ、そういうことか、であるならば……なんてこった!

今まで私たちが抱き、そして東宝が作り上げてきた「ゴジラ」という存在のイメージ。
本作のゴジラのビジュアルが初公開された時も、
そんな今までのイメージをベースに外見の良し悪しを見定めていた。
だが実際に本作を観ると、そんな我々が抱いていたゴジラの概念をぶっ壊してきた。
と同時に、ありそうでなかったものを見せた。
それは、ゴジラが我々の知る「ゴジラ」という存在になるまでの進化の過程。

今までのゴジラだってきっと異常な進化を遂げてあの姿になっている訳で、
しかしそんな過程など気にしたことはなく、
常に私たちは最終進化形たるあのフォルムを観ていた。
これの前はどんな姿をしていたんだろう? 
ゴジラが好きであればあるほどそういう想像をした人は数多いと思われる。

そして今回、庵野総監督は
その想像を見事に具現化し、ゴジラの進化を描き、新しいゴジラを生み出した。
とにかくこのゴジラの形態進化を見せていく映像は私にとって衝撃的で、
別にクリエイターでもないただの一般人でありながら
や、やられたぁぁぁぁぁ!!!」と心の中で叫んでしまった。

で、この現れた生物に対してどう対策をとればいいんだ? 
ということで映画の大部分を占めるのが会議シーンだ。
エヴァでお馴染みのBGMが流れたりするので『踊る大捜査線』を思い出したりするが、
その音楽を元々使っていたのは庵野監督な訳で、
遂に本家本元が実写映画で使った! と妙な感慨があったりした。
会議シーンは短いカット割りで人物の顔を繋ぎ、テンポよく人物同士の会話を切り返していく。
だから難しい言葉もリズミカルにスイスイ進んでいくので、
セリフも思わず聞き流してしまいそうになる。

印象的なのは、人物の表情のアップが多いことだ。特に真正面で映す画が多い。
一見単調になりやすいカットの連続ながら、
それが短く色んな人の顔のアップを何度も見せてくれるので気にならない。
むしろ各役者陣の「顔の説得力」というものを改めて感じる。
セリフの言い回しで役者としての存在感を出すのではなく、顔で見せる。
目は口ほどにものを言うが、早口の長台詞が重要というよりも、
その言葉を口にしている時の人々の表情の真剣さが印象に残りました。

長台詞に早口と幾多の言葉が重ねられゴジラ対策にひた走る日本。
だがそれらの言葉の応酬が全て無に還るのが中盤だ。
虚構の存在たるゴジラが、
超現実的(のように思えてくる描写が重ねられた)日本を虚構の世界へと沈めていく。
圧倒的なまでの破壊描写により生まれる絶望感に、正直私は涙が出そうになった。
もちろん感動もした。こんな映像が見られるとは……というか、
『巨神兵 東京に現る』を進化させたような映像で嬉しくなったりもした。
と同時に、もうこの日本は終わってしまったという気分にさせられた。
この映画はここで「終」を迎えてしまうのではないか、と本気で考えてしまった。
それほどまでの驚異的な映像。

だが、その中盤までがゴジラのターンだとすれば、今度は人間達の番だ。
映画は「ニッポン対ゴジラ」というキャッチフレーズにふさわしく、
人間達によるゴジラへの戦いが描かれる。
ゴジラ出現の事態により多国籍軍が作られ、
打倒ゴジラの為に日本に三度目の核が落とされるかもしれない、日本にとって絶体絶命の状態。
窮地に追い込まれた日本は、今までの外交アプローチとはまた異なる形で各国と交渉し、
日本という国家がゴジラに挑もうとする。
ゴジラによって全てを壊された日本が立ち上がり、再び新たな形で復活しようとする。
本作である人間が言う「スクラップアンドビルド」という言葉が、
まさしくこの映画の物語を体現している。

その打倒ゴジラで始まる「ヤシオリ作戦」は、
これはもうリアルなようでいてとんでもないくらいにロマンに溢れている。
虚構の世界に沈み込まれた日本が、手持ちの手段で嘘みたいな作戦を実行する。
そしてその作戦は非常に燃えた。

全体的に見て改めて思ったのは、これって本当に庵野監督の映画になっているなということ。
編集といいBGMの使い方といい、私が絶望した中盤の映像なんてのはもう『エヴァ』そのものだ。
だがよくよく考えてみれば『エヴァ』自体が庵野監督が好きな怪獣映画といった
特撮作品への愛をアニメーションという形で表現した作品な訳で、
監督自身が影響を受けた数々の要素をアニメ→実写と昇華させていった結果が
今回のクオリティに繋がったんだろうな、と。
時々どこかアニメっぽいモノを感じる部分はあれど、
一方で「少ない」と評される人間ドラマもちゃんとあると自分には思えたし、
一つの実写作品として成立しているな、と感じました。

逆にいえば、庵野監督の作風が合わなければ
「すごいけど、好きじゃない」となりそうだし「凄いし面白いけど苦手」になる可能性もある。
私は大好物だったのですが、これがこれからの『ゴジラ』という映画群の中で
スタンダードになるか? といったら微妙なところだなぁと思いました。
きっと今後新しいゴジラ映画が作られるとしたら今回のようにはならないと思いますし、
仮に同じ庵野監督が手掛けたとしても、また別の形に仕上げてきそうな気がします。

そこで思い出される、劇中で出てくる「私は好きにした、君たちも好きにしろ」という言葉。
ついつい深読みしてしまうのですが、この言葉はこれからゴジラを作るかもしれない
クリエイター達に対するメッセージなのかもしれないと思いました。
作りたいものを作れる世界。そんな世界は大作規模の映画興行としては中々難しい。
その世界の既成概念を一匹の生物(=庵野秀明という人間)がぶっ壊した。
本作は映画の最後にそびえ立つ存在のように、今後も残り続けることは間違いない作品です。
その存在を見て、他の監督たちが続いていけるのか? 
決めるのはこの世界なのかもしれないですね。

映画『貞子 VS 伽椰子』観た。

『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズや、
近年だと『ある優しき殺人者の記録』『殺人ワークショップ』と、
尖ってる作品を世に送り出している白石晃士監督。
そんな監督の新作でしかも大作レベルの上映規模を誇る『貞子 VS 伽椰子』を鑑賞。
公式サイトはこちら

霊媒師が複数登場して、そのうちの1人が確かな実力を持つ人物という設定は、
同じ白石監督作品の『カルト』を連想させる。
その『カルト』が1人の霊媒師の清々しいまでの最強っぷりを見せてくれるのに対し、
本作では実力派霊媒師「経蔵」の目立った活躍はそこそこ、
むしろ映画の目玉ともいえる貞子と伽椰子の対決のお膳立てに注力する。
2人の有名キャラクターの対戦カードを実現させる為に
ひた走るプロモーターのような印象を抱いた。
で、書いていて思ったのですが、そもそも『カルト』は
3人目の霊媒師が切羽詰まった状況を打破する訳で、
本作は2人(女の子と男の2人で1セットと考えてます)までしか登場しないんですよね。
やはり石原さとみ(『貞子3D』で貞子と激闘を繰り広げた伝説の貞子狩り)さんを
呼ぶべきだった……。

経蔵が登場するまでの映画前半は真っ当なJホラーとして物語が展開していく。
前半パートの恐怖演出は、良くも悪くも普通という印象でした。
大きい音で驚かせるというよりも床のきしむ音、
何かが画面に映り込むといった不穏さで雰囲気を盛り立てていくのは好感。
一方でこれまでの白石監督作品で観られたような恐怖演出があまりなく、
個人的には本作の宣伝として放送された『生でコワすぎ!』の
ホラー演出の方がハラハラしたのが正直なところ。

とはいうものの、印象的な演出が全くないという訳では無く、
自分の中でグッときた恐怖演出を3つセレクト。
(1)音
貞子による呪いが始まる合図として、呪いを受ける人間は
ハウリングに似た音を聴くことになる。
この音を劇場で聴くと、音が移動しているかのように感じられた。
ある一方向から聞こえ始め、頭の周辺を回っていくような感覚。
劇中の登場人物が両耳を抑えたくなるのも納得。

あとは恐怖演出とは少し違うかもしれないが、伽椰子の声。
ゴジラの鳴き声が聞こえてきて「待ってました!」となるような、そんな昂揚感を抱かせる。
完全に怪獣映画の楽しみ方になってしまっている気がしないでもないですが。

(2)俊雄
ネタバレになるので詳細は伏せるが、本作は容赦なく人が死んでいく。
特に伽椰子とセットで登場する俊雄がかなりの活躍(?)を見せてくれる。
俊雄が登場するパートはかなり力が入っているように見えて、
「(この映画を観に来た)子どもにトラウマを与えてやる!
と監督は決意していたんじゃないかと思うくらいにエネルギッシュ。
俊雄の姿を見て私が思い浮かんだのは『必殺仕事人』。幽霊と仕事人がどう結び付くのか? は
是非とも劇場で観て欲しい。本当にこんな仕事人いそう。

(3)呪いのビデオ
ビデオなんてもうずっと昔のメディアになってしまった気がする現代。
そんな世の中で白石監督はもう一度、ビデオの砂嵐に潜んだ恐怖を復活させたように思う。
スクリーンに映る、ノイズ混じりの映像。
フィックスカメラの呪いのビデオの映像に怖さを感じつつ、「お帰り」という気持ちにさせてくれた。
……恐怖演出とは、また違うでしょうかね?

本作の「貞子 VS 伽椰子」という異なる世界の存在同士を戦わせるまでの流れは、
経蔵の存在を受け入れられるかどうかで、賛か否に分かれると思う。
彼が映画の便利キャラとして動いている部分が強い。
その分「なぜ2人を戦わせなければならないのか」という理由は
考えられており、そこでバランスを取っている印象。
試合が開始した時点で経蔵というプロモーターの役割は半分終わり、
後は試合を盛り上げるアシストをするのみ。
だからこの男、頼れるようで実は全く頼れない。
とはいえ彼とパートナーである少女「珠緒」とのタッグは観ていて面白く、
この2人を主人公とした前日譚が観たいものだ。

貞子と伽椰子は、お互いの得意技を駆使して文字通りぶつかり合う。
その結末はどうなるのか? それは実際に観ていただきたいのだが、
白石監督が自身の作品で今まで描いてきた映像の
お金と手間が掛かったバージョンが観られて、個人的には満足。
ただしインパクトがあったかというと、予想の範囲内に収まった感じもする。

役者陣は『ヒメアノ~ル』に続いて佐津川愛美さんがかなり良い。
やっぱりこの方も日本映画界を引っ張っていく1人ですよ。
改めてそう感じるほどの身体の張りっぷり。
激しさは『コワすぎ! 劇場版・序章』の久保山智夏さん、
恐ろしさは本作の佐津川さんでしょうか。
全体的に登場人物が生きることも、死ぬことも、
絶望することすら全力なのが観ていて気持ちが良いです。
「死んでしまうかもしれない……じゃぁ、何をすればいい?」という行動の速さ。
この人物造形も白石監督作品らしさなのかもしれないですね。

複数人でワイワイ観るには良い娯楽作になっているかと思いますので、
興味があれば是非どうぞ……というか、
お金の掛かった白石監督作品がまた観たい! 
なので是非一度鑑賞を!

以上。

theme : 映画感想
genre : 映画

プロフィール

ヤギメロ

Author:ヤギメロ
映画とか本とか、色々好きな者だす。

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